公認心理師(こうにんしんりし)(Certified Public Psychologist)は、公認心理師登録簿への登録を受け、公認心理師の名称を用いて、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、次に掲げる行為を行うことを業とする者をいいます。(公益財団法人 日本公認心理師協会より)
公認心理師の養成と活動場所
公認心理師は大学と研修機関、あるいは大学と大学院において所定の科目を修め、国家試験に合格し、厚生労働省と文部科学省の指定機関の登録名簿に登録され、公認心理師となります。医療、福祉、司法、教育、産業をはじめとしたさまざまな領域で活動します。医療においては主治医の指示のもとで心理的な援助を行い、企業ではストレスチェックをはじめ、学校ではスクールカウンセラーとして学生の方々の相談を受け、公的機関では心理判定員として活動します。
公認心理師の役割とアプローチ手段
心理状態の観察とその分析を行い、心理状態に合わせた助言やその他の援助を行います。そのための手段として、心理検査やカウンセリング、各種心理療法を用いることがあります。公認心理師には守秘義務が課せられているので、安心して相談していただくことができます。また、各領域でチーム連携を図り、包括的な支援につながることを目指します。
療育分野においては、お子様への検査や、観察、遊びを通した関わりを主として活動します。時には保護者様とのやり取りの中で、日々のお子様の様子をお聴きし、チーム連携を取りながらお子様にあった環境の調整を行うこともあります。
公認心理師と臨床心理士の違い
「臨床心理士」は日本心理臨床学会が認定する心理学における民間の専門資格です。「臨床心理士」の草分けとして、1950年代から日本国内においても心理学を生業とする人々が出てきました。
しかし、心の問題は目に見えにくくわかりにくいことや個人差が大きいこともあり、専門資格として国に認定されることは当時ありませんでした。また、当時はまだまだカウンセリングや心理療法に関するエビデンスがまだまだ蓄積されていなかったこともあり、資格としての検討は滞ってしまいました。
1988年には民間資格である「臨床心理士」の資格審査・認定を行う「日本臨床心理士資格認定協会」が発足しました。これによって、同年12月には日本で最初の「臨床心理士」が誕生しました。臨床心理士には、5年間での更新制度があり、日々の自己研鑽や研究を通して、一定の研鑽を積まなければ資格の更新がされないというものでした。これは、常に専門的資質の維持・向上に努めなければならない、という民間資格の中でも一定の水準を担保するためのものでした。
そのため、臨床心理士は資格取得後も、生涯学習として、研修会への参加や学会での活動、論文の発表などで所定の項目を修め、5年ごとに再認定を受けることになります。
1995年になると、学校臨床ともされる『スクールカウンセラー委託研究事業』が開始され、その後、臨床心理士が各都道府県の公立小学校、中学校、高等学校へと派遣されていきます。2013年からはすべての公立学校へのスクールカウンセラー配置と、24時間体制の電話相談を実施することになりました。2023年現在、国内には3万8千人程度の臨床心理士がいるとされています。
その一方で、心理職の資格は臨床心理士にとどまらず、様々な資格が煩雑と増えてきたこともまた事実です。
そのような現状の中で、心理専門職を国家資格とする動きが高まり始めました。
2015年に日本で初となる国家資格の心理資格「公認心理師法」が成立しました。そして、2017年には法律が施行され、2018年に日本で初めての心理系の国家資格「公認心理師」が誕生しました。臨床心理士は大学院で心理学を専攻し、試験に合格することで臨床心理士を名乗れるようになります。
その一方で、公認心理師は大学で必要とされる所定の科目を修め、なおかつ実務経験を積むか、大学院に進学し心理学を専攻し修了することで、受験資格が得られます。最低でも受験資格を得るまでに6年は要することとなります。また、公認心理師は、厚生労働省と文部科学省が共管で管轄する資格となります。そのため、医療現場をはじめ、自治体や司法、産業、福祉、教育など他領域の知識の習得が必要となります。
公認心理師の役割は公認心理師法第1章の2条で、大きく4つのことが記載されています。
- 心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること。
- 心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言その他の援助を行うこと。
- 心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
- 心の健康に関する知識の普及を図るための教育および情報の提供を行うこと。
また、臨床心理士にも課せられていた「守秘義務」についても、公認心理師法によって厳格に規定されました。
第四十一条 公認心理師は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。公認心理師でなくなった後においても、同様とする。
(罰則)
第四十六条 第四十一条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
この秘密保持義務(守秘義務)という言葉は、人に口外しないことを前提として悩みを相談して下さる方々のプライバシーを守り、どんな悩みも安心して相談できることを保証するために課せられています。正当な理由と記載がありますが、これはいわゆる命の危険が差し迫っている状況などの場合は例外的に、という意味でとらえていただければと思います。
また、国家資格となったことで公認心理師は「名称独占資格」となりました。これは、公認心理師ではないものが公認心理師の名称を用いてはいけないというもので、罰則等もあります。
民間資格である臨床心理士とは異なり、資格が更新制ではなくなりましたが、多くの公認心理師は、各種職能団体に所属し、臨床心理士同様に日々研鑽を積んでいます。