理学療法士(りがくりょうほうし)(Physical Therapist)は、厚生労働省によって認定された国家資格で、ケガや病気などで身体に障害のある人や障害の発生が予測される人に対して、基本動作能力(座る、立つ、歩くなど)の回復や維持、および障害の悪化の予防を目的に、運動療法や物理療法(温熱、電気等の物理的手段を治療目的に利用するもの)などを用いて、自立した日常生活が送れるよう支援する医学的リハビリテーションの専門職です。
治療や支援の内容については、理学療法士が対象者ひとりひとりについて医学的・社会的視点から身体能力や生活環境等を十分に評価し、それぞれの目標に向けて適切なプログラムを作成します。
理学療法士の歴史的背景
日本における理学療法士の歴史は、1960年から始まりました。厚生労働省が発行する「厚生白書」で、医学的リハビリテーションが予防および治療とならぶ医療の重要部門として初めて言及されました。1963年、WHO(世界保健機関)の要請により、日本初の理学療法士・作業療法士養成校が認可・開校されました。
1965年には、「理学療法士及び作業療法士法」が施行され、「理学療法士」「理学療法士」が公式に定義されました。1966年、初めての国家試験が実施され183名が合格。「基本的動作能力の回復を図ること」を専門とする唯一の医療専門職が、日本で初めて誕生しました。
理学療法士の活動場所
理学療法士は、病院、クリニック、リハビリテーションセンターなどの医療施設、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、デイサービス、通所リハビリテーションなどの介護施設、福祉施設、高齢者の介護予防、フレイル予防、健康増進、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病に対する指導、スポーツ現場、産業分野、教育分野など、さまざまな場所で活動しています。
近年では児童発達支援事業所や放課後等デイサービスなどの支援施設でも理学療法士のニーズが高まっています。
理学療法士の役割と治療手法
理学療法士は、身体に障害のある人に対して、運動能力や身体機能を評価し、制限された機能や能力に応じた個別のリハビリテーションプログラムを作成します。基本動作能力(寝返る、起き上がる、立ち上がる、座る、立つ、歩く)や、その他の応用動作能力の改善を目的に、関節可動域の拡大、筋力強化、麻痺の回復、痛みの軽減や、日常生活動作練習、歩行練習などの能力向上を目指す治療を行います。
これらの動作改善に必要な技術を用いて、日常生活の自立を目指します。また、必要に応じて福祉用具の選定や、住宅環境の調整をアドバイスします。
他の専門家との協力
理学療法士は、医師をはじめ、看護師、作業療法士、言語聴覚士、栄養士、臨床検査技師、介護士、医療ソーシャルワーカー、ケアマネージャーなどと協力し、身体に障害のある人に対して総合的な治療を提供します。療育の現場では、特に心理士、保育士、児童指導員と連携し、子どもの状態を評価、分析し、治療プログラムを作成、ご家族や周りのスタッフにも教育やサポートを行います。
理学療法士の療育における役割
理学療法士は、主に子どもの運動機能の評価と改善にアプローチします。専門的な視点から発達課題を抽出、個別のニーズに応じた療育を行い、家族や関係職種に対してアドバイスを行います。
例えば、筋力が弱い、協調的な運動が苦手などの個々の問題点について、遊具を用いたダイナミックな運動やリズミカルな運動など、遊びを交えながら適切な運動を処方することで運動発達をサポートします。