療育

限局性学習症/学習症(SLD/LD)ってなに?

もうすぐ春休みですね。
入園、入学、新学期、転校、転職…この時期は色々な出来事の前のほんのひと時…緊張もあるかと思いますが、少しでもホッと一息入れていただきたいなと感じる今日この頃です。

本日はいわゆる学習症(learning disorder ; LD)こと、限局性学習症(Specific learning disorder ; SLD)について記載できればと思います。
この記事のゴールは、限局性学習症というものの症状や、どういう症状なのかを知っていただけるところに持っていければと思います。

SLDとは要約すると、読み、書き、計算など、極端に困難さがある神経発達症のひとつを指します。

平成11年に報告された文部科学省の定義によれば、以下のように説明されています。
「学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。」(旧文部省, 1999より引用)

具体的な症状については次に記載しますが、誤解を招かないよう、先に注意点を記載できればと思います。
医学的な診断基準(DSM-5、ICD-11)において、SLDは知能指数が知的能力障害に該当していないことが前提となります。もし知的能力障害がある場合には、その症状として学習が障害されていると考えます。まずこの点だけ前提としてご理解の上で、続きを読んでいただきたいなと思います。

さて、それでは具体的にはどのような症状があるのでしょうか?
大きくは3つの症状に大別されます。

  • 読字障害:文字を1文字ずつ、あるいは単語ごとに区切って読むなど。
  • 書字障害:文字は理解していても、書くことも相当な困難さがあるなど。
  • 算数障害:多い少ないなど数量の理解の難しさ、数字の順序、計算の困難さなど。

症状の一例は上に記載した通りですが、専門機関の検査や、医療機関診察を経て診断に至ることとなります。
具体的には、

  •  読むことも書くことも難しいけれども、言葉でなら受け答えがすんなり出来る。
  •  文字はすらすら読めるし受け答えは出来るけれども、書くとなると全く文字が書けずプリントを空白のまま提出する。
  •  読み書きは得意だけれども、数字だけは読めなかったり「10」という数記号が、数量の「十個」であったり、順序の「十番目」であったり、時計の「50分」であるなどの理解に相当な困難さがある。

などといった場合があります。

そしてこのSLDですが、これまでのブログ記事でも取り上げてきた自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(AD/HD)、発達性協調運動症(DCD)との併存(合併)することも少なくないとされています。

なぜSLDの症状が出るのかについては、様々な説がありますが、いずれも脳の各部位のアンバランスさによって症状が出ているのではないかとされています。ですが、当然苦手とする部分によって、脳の部分も異なってくるため、この点については割愛させていただきます。

ではどのようにしていくことが望ましいのでしょうか?
まず結論から記載しますが、「頑張ったらできる」、「努力が足りない」、「勉強不足」でどうにかなるなら当事者は苦労しないということです。

その中で、どの部分で躓きがあるのかを見ていくことや、どうすることでできることが増えるのかを見ることが大切になります。いわゆる環境調整になります。

例えば、読字障害があっても「音声」で読み上げたら理解できるのであれば、読み上げアプリを使うことも一つです。書字障害も音声入力で対応できるなら、書字を無理するより、本来の目的となる学習能力(読解力など)などが大きく伸びる可能性を秘めています。
算数障害であれば、日本LD学会 研究委員会(2020)に公表したパンフレットの情報も参考に、いきなり計算を求める以前に、言葉と量、数字と言葉の一致や、順序や奇数などの順に少しずつ遊びなどを通して覚えていくことから始めてみても良いかもしれません。

ただし、その手段が個々人によって必ずしも合うとは限りませんし、定着が難しいようなら別の手段を考えながら、より生きやすい形に配慮をしていくことが重要になります。

SLDは一見すると学習以外は良好な人間関係や、会話、コミュニケーション、概念理解など明らかな苦手さが目立ちにくい発達症です。そのため、読み書き算数などの勉強面の苦手さが見えたとしても、勉強不足や苦手なだけだと受け取られやすく、結果として当事者の方々は相当な負担を感じることが少なくありません。その負担から、自己否定や自己肯定感の低下により二次障害を患うことがあります。

だからこそ、まずは、SLD、限局性学習症というものがあること。それは努力云々で解決できない医学的な疾患であることを知っていただき、いかに環境を調整することが必要かということを知っていただければと思います。

最後に疑似的ですが、筆者が考えた例えをお示しできればと思います。
下の文章を読み、記載されている内容に従って同じ言語で回答し、その回答を同じ言語で書字してください。周りの友人たちは全員スラスラ読んで黙々と取り組みを開始している状況とします。

A primavera está quase chegando, mas qual é o Índice de Cerejeiras em Flor de 10 em 15 de abril? Dê-nos sua opinião subjetiva. Observe que, em uma escala de 10 pontos, a classificação é 10 quando a planta está em plena floração e 1 quando não está em floração, e informe-nos com base em suas observações.

  • 文章で文字が読めましたか?そもそも読み方が分かりましたか?
  • 数字の意味する月、日付、評価の数字の概念が理解できましたか?
  • 回答するために必要な文字を自力で書けそうですか?

補足として、通訳者が隣にいてくれたとします。言葉で説明まではしてくれ、回答はお伝えすれば書いて下さるものとします。
通訳者「もうすぐ春になりますが、4月10日から15日までの桜の開花指数はどの程度でしょう?主観的で良いので回答してください。なお、10点満点評価とし、満開のときは10点、そうでないときは1点で、観察結果に沿った評価を教えてください。」

  • 通訳者がいたら内容を理解できそうですか?
  • 通訳者がいたら次に進めそうですか?
  • 「勉強不足だ」「もっと努力しなさい」と言われてどうにかできますか?
  • 通訳者がいることを「勉強不足だ」「ズルい」と言えますか?

文責:高野

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