療育

ディスレクシアを知っていますか ①「視覚処理からの読み書き」

「読み書きができないんです」。この「困りごと」はたくさんの親御さんからお聞きします。
ディスレクシアというのは、文字の読み書きに難しさを感じる状態を指す学習障害(LD)や、限局性学習症(SLD)の一つで、①「文字の形がわからない」視覚情報処理の機能不全、②「どう読むのか理解できない」音韻処理の機能不全が主な症状です。

今回は①の「文字の形がわからない」、視覚処理の問題から、読み書きについてお話したいと思います。

まず、なぜこのようなことが起こるのか。まだ詳しい原因は解明されているわけではありませんが、ディスレクシアを持つ人は脳活動の異常があることがわかってきました。脳の部位については割愛しますが、英語圏のディスクレシアと日本語圏のディスレクシアでは、脳の活動性や不活性化の部位が異なる、つまり、話す言語によって病態が異なる可能性も示唆されています。

では、ディスレクシアの方が、どんなふうに文字を捉えているか、擬似体験してみましょう。




このように、字が歪んで見える、波打って見える、二重になる、反転している、ノイズがかかるなど、さまざまな見え方をしていると考えられています。

ちなみに、英語ではこのように見えるそうです。

アルファベットで線が一本無かったり、文字の半分しか見えなかったりするようですが、俳優のトム・クルーズやキアヌ・リーブスなど、台本を読むのに非常に苦労したそうです。

年長から学校に入り、最も苦手になる教科が国語というお子さんが多いですが、算数も社会も結局はこの「文字を読む」という工程が入ってきます。板書や音読、読解等、1時間目から6時間目までお子さんは頑張っているのです。私が経験したお子さんの中には、田んぼの「田」が、立体的な四角柱4つに見える、という方もいました。

「なんで読めないの?」と聞かれても、小さな子どもたちが自分の見え方を言語化することは難しく、工夫やサポートを受けないまま、皆と同じ学習方法の中、辛い思いをしていることは多々あります。

たくさんのサポート方法はありますが、まず「字が見えづらい」状況を周囲が理解することがスタートです。そして、そういった困難でお子さん自身が大変な苦労をし、辛い思いをしているということに理解を示すことが大切です。
見えやすいサポートとして、小さい文字や感覚の狭さで文字が動いたり、二重に見えるお子さんには、拡大コピーした上で文字の間に補助線を入れるなどの工夫をします。

下図は宿題の文章を拡大コピーし、一問ずつノートに貼り付けています。
小さな文字は書きにくいので、広いスペースを確保し文字を書きやすくする工夫をしています。

次に、書く工夫ですが、
手先の不器用さや微細運動に苦手さがあるお子さんやには、ノートもビジュアルイーズ45mm方眼ノートや、書きやすい筆記具の工夫をします。

大きなマス目で書きやすい

漢字は部首がバラバラになるので補助線を書き足しています。

「道村式カード」といって、視覚に困難を持つお子さんに覚えやすいよう「ツ、ワ、子」と文字を分解してコツを掴んでもらうものです。

「田」や「普通」のマスではなく、「✖️」」マスノートです。

「✖️」」線入りの方がマス内に文字を収めることを意識しやすいお子さんもいます。

読む工夫は、読む行に定規や下敷きをあてて読む行を浮き出させたり、消せる蛍光ペンで線を引いてあげると文字が追いやすいです。また、文字や行間を大きくするのも工夫の一つです。

日本語はひらがな、カタカナ、漢字が入り乱れる上に、国語は縦書き、算数は横書き、社会の教科書は右開き、音楽の教科書は左開き・・・我々は疑問も持たず何気なく簡単にできてしまうのですが、ディスレクシアのお子さんは、「表紙」がどっちなのか、躓くことも多く、先生に「何ページを開けてください」と言われても、どこにページ番号が載っているか探せないという難しさももっています。

視覚障害とディスレクシアは違います。視覚障害があるのではなく、処理が難しいのです。しかし、視覚障害者用のシート上の穴の空いたプラスチックシート(下図のガイドシート)やビジュアルイーズを使って有用だったお子さんもたくさんいらっしゃいます。

レター用ガイドセット

そして、たとえば生活年齢が6歳でも、発達年齢が4歳だと、さらに文字は読みにくい、つまり文字を読ませるのは「早い」のかもしれません。
私個人の考えですが、お子さんそれぞれに合った時期、配慮、工夫をするにあたって、大人から一方的に提案するのではなく、お子さんの意見を聞きながら、一緒に目標に向かうことが必要だと考えています。目標に向かう過程は試行錯誤してやりたいことができ、充実感が得られるからです。イヤイヤやるよりも、やりたいと思って取り組んでくれた方が楽しいですし、達成感も断然違います。もちろん工夫の提案は大人からですが、そこでお子さんとディスカッションすることで、新たな「商品」と新しい「伸び代」が生まれると思います。

文責:景山

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