春の訪れが近いのか、太子町は段々と暖かい日が増えてきました。
さて、本日は自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: ASD)について簡単に記載できればと思います。この記事をみて、「診断があるからそうなんだ」「よく分からないものだ」と、他人事になるのではなく、「私たちも日々経験していることなんだ」と思っていただけたら嬉しいです。
ASDは、かつては広汎性発達障害(pervasive developmental disorders : PDD)とされ、その中で「自閉症」「アスペルガー症候群」「小児期崩壊性障害」などを含むいくつかの診断に分かれていました。
しかしこれらの症状は、症状の偏りや違いはありますが、根本的な症状は同じ、つまり連続体(スペクトラム)であるとされ、2013年以降は「自閉スペクトラム症」という診断名でまとめられました。
それではASDの症状にはどのようなものがあるのでしょう?
ASDの症状は様々ありますが、イギリスの児童精神科医のローナ・ウィング医師は、大きく3つの偏りがあるものと定義しました。日常場面の例も出しながら記載してみます。
- 社会性:人に対し無関心、親の後追いをしないなど
- コミュニケーション:オウム返し(エコラリア)や、一方的な会話など
- 想像力(イマジネーション):予定の変更を過度に恐れる、相手の気持ちを理解し辛いなど
これら3つの偏りがあることから「ウィングの3つ組」などの名称で症状を説明されることも多いです。
なお例については、あくまで筆者が考えた一例ですので、「当てはまったらASD!」などということは決してございません。
このウィングの3つ組によって様々な症状が出るとされています。
乳児期であれば、社会性の偏りから保護者の方へ関心を示し辛かったり、コミュニケーション面では、就学後にご自身の興味関心がある事柄の話を一方的に話し続けたり、想像力については、急な予定変更に対し強い不安感からパニック(癇癪)になるなどがあります。
特に、想像力の苦手さがあることから、イメージがしやすく、結果が明確に分かるものや、同じ行動が出やすいとも考えられます。いわゆる「こだわり」ですね。相手の気持ちをイメージすることが難しく、時に意図せず相手を傷つける発言をしていたようだ、ということも少なくありません。
字面だけだとどこか他人事に見えますので、大人の生活場面で考えてみましょう。
いきなり量子力学の講義が始まったとしましょうか。
- 興味関心が向かなければどれだけ暇だったとしても、そもそも講義の話を聞こうとは思いませんよね。何なら関わろうと思わないですよね(社会性)
- 仮に講義に加わったとしても、恐らく質疑応答に困りますよね、興味関心が無い話題であればなおさらですが(コミュニケーション)
- そして何の話かイメージがつかないと嫌になりますよね。仮に分かったとしても、いつまでこの知らない話が続くのか分からないと段々嫌になってきますよね (イマジネーション)
別に量子力学ではなく、時事ネタや、魚の話、何の話でも同じようなことが起こるかと思います。分かる話なら暇潰しになるかもしれませんが。
結果的にストレスが溜まっていくかと思います。
要するに私たちも意識していないだけで、診断の有無に限らず、無関心さも、会話の難しさも、先行きがイメージしにくいしんどさも、よくある話なのです。
最後に、私たち人間は「違うこと」「予想が出来ないものごと」に対して、不安や恐怖を感じます。逆を言えば、「同じこと」「ある程度理解ができるもの」に対しては幾分余裕を持てるものです。少しでも、ASDの症状が他人事ではないということを知っていただけられたらと思います。そのうえで、「できていない点」だけではなく「できている点」「得意な点」にも目を向けてほしいなと思います。
具体的な支援方法や、関わり方などは個々に応じて異なりますし様々な理論がありますから、書き出すときりが無いので、今回の記事はここで筆をおこうと思います。
文責:高野
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