療育

知的能力障害(Intellectual Disabilities)ってなに?

もう春と言っても過言ではない陽気になってきましたね。
お子様に限らず、新年度ということで、多くの方々が、新たな環境に向かっていく時期かと思います。年度は始まったばかりですから、少しずつ環境に慣れていきたいものですね(筆者自身にも言い聞かせています)。

さて、神経発達症に関して、ASD、ADHD、LD、DCDと記事を記載してきました。
一方で、LD以外に併存する場合がある、知的能力障害(Intellectual Disabilities)について、まだ記載が出来ていませんでした。
そこで、今回は知的能力障害、いわゆる知的障害とは何かについて、記載できればなと思います。今回の記事のゴールは「知的(能力)障害ってこんな感じなんだ」「こういうことが必要なんだ」と知っていただけるところに設定したいと思います。

まず知的障害とは何なのでしょう?
端的に言えば、「知的機能」と「適応機能」の両方が障害されている状態を指します。
「知的機能」とは、いわゆるWISCなどの知能検査での数値を指し、これの結果が一定を下回っている状態を言います。
「適応機能」とは、概念や、社会性、実用性など、いわゆる社会適応するために必要な「自立機能」が障害されている状態を言います。
これらの両方が障害されている状態のことを、知的障害と言います。知的障害も位置づけとしては、神経発達症の1つされています。

さて、いざ診断名を見ると「軽度知的障害を伴う」などと記載されることがあります。

それではいわゆる「軽度」や「重度」とは何なのでしょう?
アメリカ精神医学会の「DSM-5」によれば、概念、社会、実用のそれぞれについて、軽度から最重度まで4段階で指標が出されています。
全て書くときりが無いですが、ここで言う「軽度」は、物事の概念について若干のサポートが必要な程度とされています。そして「最重度」は、生きていく上で概念、社会、実用ともに他者からの介助などのサポートを必須とする状態とされています。

ここで誤解しないでほしいことが1つあります。これは筆者が必ず知って頂きたいことです。
それは、「軽度」「重度」という言葉は「程度を表すだけ」で、ご本人様にとっては軽度も重度も関係ないのです。
軽度とされていても、その分支援が十分に受けきれず、かえってしんどい想いをする方もいらっしゃいます。重度でも、手厚く支援がされていれば、生きやすくなります。ですので、文字だけで軽度、重度と判断せず、実際にご本人様の立場に立った時に、どの程度困っているのか、を考えて頂きたいな、と思います。

では、知的障害と診断を受けた場合、何が必要なのでしょう?
他の神経発達症と重複する点は多いですが、大前提として、ご本人様が楽に生きていきやすい環境を整えることが重要とされています。

例えば、文字の代わりに絵や写真など一目でわかる形にしたり、端的で具体的な言葉で繰り返し伝えたり、などがあります。

図は手順の例です。どこになればゴールなのか分かりやすいものが良いかと思います。

例ですが、「風呂入ってきて」と言うのは簡単ですが、細かくみると「脱衣所に行く」「服を脱ぐ」「頭を洗う」など、色々な動作があります。
1つ1つ言葉で伝えることも大切ですが、1連の流れが分かる手順のイラストや、写真があれば、ご本人様にとっても分かりやすいです。ただ、手順の視覚化についてどんなものが良いかは、ケースバイケースです。単語帳みたいに捲るものなら携行しやすいですし、1枚見たときに順番が分かるものも参考例の一つです。着脱可能なものも良いかと思います。

長々と書いておりますのでまとめに入りますが、前提は環境調整です。時には楽しく練習することなども必要になりますが、基本的にはご本人様が難しいことを無理に訓練するのではなく、「どんな環境だったら安心して過ごせるかを見ていくことが大切なんだ」と知って頂けていれば幸いです。

文責:高野

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