療育

運動とことば

ことば(発音や発話)と運動については、全く別の機能と捉えられる事も多いのですが、実は密接に連動している機能です。

発達障害のお子様についての悩みで、発話しない、滑舌が悪い等のご相談を受けます。

そこで導入するのが、お子さんが「選んだ」「好きな」遊びです。追いかけっこが好きな子、ボール遊びが好きな子…。なぜ運動を?と思われる事も多いです。

お子さんが自ら「選び」、「好きな」遊びをするということは、緊張することなく、リラックスして楽しく集中でき、そこでの声掛けや、お子さんの発話へのリアクションで、お子さんのそもそもの「発声・発話」能力を底上げします。

大人が選んだ課題ではなく、お子さんが自ら選んだ好きな遊びをし、その中の関わり合いで、「自分がこう言えば大人がこう反応する」ということがお子様に理解できるからです。

滑舌の問題は、お子さん自身が、自分が言った言葉を聞く能力が身に付く5歳以上から取り組む課題になります。

例えば、「ボタン」を「ボバン」と言ったり、「テレビ」が「テビレ」になるお子様がいますが、どちらも大人は間違っていることがわかりますが、お子さんは自己が発話した音声を聞き取り、間違いとは気づきません。また、単語の中に含まれる順序やリズムも理解が未発達の場合があります。

言葉の基盤はまず発声ですが、運動をして体幹、特に腹筋を鍛えることで横隔膜など発声に必要な要素を準備します。

音を作る口腔機能を担うお口周りも舌も筋肉であり、今後発達していく口腔機能の基盤は体幹機能です。発達障害のお子さんは低緊張を合併しやすく、お口周りや舌も低緊張の場合が多いです。

ですから、まず口腔機能を整えるために運動でしっかり遊んだり、お家で硬いものを噛む練習をしてもらったりして、口腔機能の発達を援助する基盤作りを行います。

また、発話や構音に密接に関わるのは手指の巧緻性、つまり指の運動になりますが、指の巧緻性を保障するのは肩周りの筋肉です。

肩がしっかり発達していないと、指先は細やかで繊細な動きができません。また、肩は首周囲の筋肉と連動しています。

肩周りの筋肉が薄くパワーが少ないお子さんは、発声が小さかったり、途切れ途切れだったり、単語レベルだったり、発音が不明瞭だったりすることが多々あります。ですから、こどもオーケストラでは綱登りを導入し、自重を引き上げるだけの肩の力を養いつつ、発話を促進しています。

他の施設ではボルダリングが導入されていますが、これも良い効果があると思います。

ただ、発達障害の視覚的な捉え方を最大限考慮し、どこに手や足をかけるかを考えてしまう、登るのに必ず援助が必要(自重を大人が支えるため)であるボルダリングは敢えて導入せず、揺れる綱で身体の使い方と体幹をしっかり鍛える「綱登り」を導入しました。

運動遊びで思いっきり身体を動かし、それが自分の選んだ好きなものであればあるほど、発声頻度と発声量は増加します。

そして楽しければより多くの発語が出ます。自分で発した言葉を聞き取り、尚且つ周囲の反応が変われば、言葉のバリエーションが増えていきます。

発話は向かい合ってSTの先生とするイメージがあると思いますが、STの先生も遊びで走り回ったりくすぐったりして言葉を引き出し、発話しやすい環境調整と身体機能の発達を援助をしています。

「ことば」で大切なことは、自主的に発話したくなるような場面や、きっかけ(運動)を作り、自分で発した言葉を聞き取り、同時に自分が発話することによって周囲の状況や大人の反応の変化に気づく、それを楽しく積み重ねていくことです。

文責:景山

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